CHAPTER 05 / 全10章
クリーニング特約は、どう読めばよい?
契約書の特約は大切です。ただし、書いてあれば何でも有効というわけでも、通常損耗なら特約も無関係というわけでもありません。
何の費用を、どの範囲で、いくら負担する約束だったのかを具体的に確かめましょう。
「原則」と違う負担を、特約で決めていることがある
特約は、その契約のために設けた個別の取り決めです。退去時のクリーニング費、エアコン洗浄費、敷引き・償却、短期解約違約金などが書かれていることがあります。本文の末尾だけでなく、別紙、覚書、更新時の合意も読みましょう。
国交省ガイドラインでは、通常の清掃をしている場合の専門業者による全体清掃は貸主負担という基本的な考え方があります。一方、有効なクリーニング特約により借主が負担することもあります。自分で掃除したことだけで、特約による費用が必ずなくなるとはいえません。
クリーニング特約を読む4つの視点
- 対象が分かるか室内全体、エアコン、換気扇など、何の作業の費用か。
- 金額や計算方法が分かるか定額か、広さによる単価か、税込みか。追加請求の条件も確認。
- どう説明され、合意したか通常の原状回復とは別の負担だと理解できる説明・文面だったか。
- 今回の請求と一致するか契約の作業・額に沿っているか、前払い分と重なっていないか。
入居時に「退去時清掃費」を前払いし、退去時にも同じ名目が請求されたら、領収書と特約を照合します。一方、「入居前の清掃」と「退去後の清掃」が別々に定められている場合もあります。名目が似ているだけで二重請求と断定せず、作業の時期・対象・充当関係を説明してもらいましょう。
特約の判断は、言葉ひとつで終わらせない
「原状回復は借主負担」とだけ書かれた条項と、通常損耗も含む具体的な費用・範囲を説明して合意した条項とでは、検討する事情が違います。国交省ガイドラインは、特約の必要性・合理性、借主の認識、負担の意思表示等を考えることを示しています。
消費者庁が紹介する裁判例には、清掃作業・金額を認識して合意できることや負担の程度等を検討し、清掃費用の条項の差止めを認めなかった例もあります。個別の契約についての判断なので、すべてのクリーニング特約が有効という意味ではありません。公的な裁判例紹介・争点④ ↗
短期解約違約金・敷引きも、別の項目として確認
解約違約金は、解除の事由・時期等に応じた同種契約の平均的な損害を超える部分が無効になり得ます(消費者契約法9条1項1号)。同条2項は、求められた場合の算定根拠の概要の説明について事業者の努力義務を定めています。まず算定理由を尋ね、必要なら相談します。
敷引き・償却は、敷金等の一定額を返さない取り決めです。定めの有無、金額、何を含むか、別途の原状回復費と重ならないかを確認します。有効性は契約全体と個別事情によるため、自己判断で支払いを止める前に相談しましょう。
この章の根拠・公的資料
確認日:2026年9月25日。法律・ガイドライン・契約モデルを区別して参照しています。
- 法律消費者契約法|e-Gov法令検索 ↗
第9条第1項第1号・第2項(解約に伴う違約金等)、第10条(消費者の利益を一方的に害する条項)。適用要件と個別事情の確認が必要。
- 行政の解説消費者契約法の逐条解説|消費者庁 ↗
第9条・第10条の考え方を確認する公式解説。特約の有効性は条文だけで一律に決まらない。
- ガイドライン原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省 ↗
公式掲載の再改訂版(2011年8月)。第1章・別表1、2(原因、範囲、経過年数)、別表4(精算明細例)を確認。法律ではなく一般的な基準。
- ガイドライン原状回復ガイドライン Q&A[PDF]|国土交通省 ↗
Q1(記録)、Q3・5(特約)、Q6・9(敷金)、Q7(クロス)、Q10(管理)、Q13(単価)、Q18(経過年数)。古い資料の法制度説明は現行法令で補足。
- 裁判例の紹介消費者支援機構関西と株式会社明来の控訴審判決について|消費者庁 ↗
大阪高裁2013年10月17日判決、2015年3月3日確定。原審の理由等から清掃費条項の差止めを認めなかった部分(争点④)を参照。個別事例の結論を全契約に当てはめない。
- 公的な助言賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!|国民生活センター ↗
2026年2月17日公表。契約確認、入退去時の記録、修繕の連絡、請求に納得できない場合の確認と相談。