CHAPTER 03 / 全10章
退去立会いは、確認と合意を分けて考える
一緒に部屋を確認することと、修繕費用の全額に同意することは別です。落ち着いて内容を読み、分からない部分をその場に残さない工夫をします。
書類の名前より本文を確認。現状の確認なのか、費用負担・精算への合意なのかを見分けましょう。
退去立会いで、何をするのか
借主と貸主側の担当者が、退去する部屋の傷・汚れ、設備、残置物、鍵や付属品等を確認する機会です。修繕箇所や負担について説明される場合もあります。担当者が外部業者なら、現状を記録する人なのか、費用の合意までできる人なのかも確認します。
参加は、本当に必須?
参加できるなら、入居時の資料を見ながらその場で食い違いを確認できる利点があります。難しい場合は、無断で欠席するのではなく、別日・代理人・オンラインや写真での確認、鍵の返却方法を相談し、合意内容を残します。
代理人には「現状確認のみ」「費用負担への同意は本人確認後」など、任せる範囲を明確にして貸主側にも共有。国交省の標準契約書は原状回復の内容・方法を協議するモデルを示していますが、実際の手続は自分の契約と調整内容で確認します。
書類は「何を認める文面か」を読む
- 現状の確認
- 「寝室の壁に傷がある」など、観察した状態の記録。傷があることと、借主が負担することは分けて考えます。
- 費用負担の承認
- 「借主負担とする」「全額を支払う」「金額は後日確定」等の文面。金額未確定でも負担を認める内容になっていないか確認。
- 精算・和解の合意
- 「今後異議を述べない」「これをもって一切解決」等の文面。後から争いにくくなることがあるため、対象と範囲を理解して判断します。
金額や根拠が不明なら、説明と写しを求め、確認してから返答したいと伝えます。白紙や空欄の多い書面、内容を表示しきれていない電子署名画面にも注意。内容に相違がある場合は訂正や留保を双方で確認し、そのままの写しを受け取ります。一方的な書き込みだけで合意の効力が必ず避けられるわけではありません。
「傷の場所は確認しました。費用負担については、契約書と見積りの内訳を照合してから回答したいです。この書類が何への同意になるか、説明と写しをお願いします。」
鍵を返した記録まで残して、ひと区切り
返した日、返却先、鍵の本数、明渡しの確認を書面・メール等で残します。精算連絡の送付先、担当窓口、明細が届く予定も聞いておきましょう。費用に食い違いがあっても、部屋の返還手続と費用の協議を混同せず整理します。
もう署名してしまったら?
署名したという事実だけで必ず手遅れになるわけでも、簡単に撤回できるわけでもありません。書面・説明内容・当日のやり取りを保存し、何に合意したか、契約条項や勧誘に問題がなかったかを消費生活センターや法律相談で確認します。電子署名も控えを保存してください。
この章の根拠・公的資料
確認日:2026年9月25日。法律・ガイドライン・契約モデルを区別して参照しています。
- 法律民法|e-Gov法令検索 ↗
第415・416条(損害賠償)、第606・615条(修繕・通知)、第617・618条(解約)、第621条(原状回復)、第622条の2(敷金)。公式APIの現行本文と照合。
- 法律借地借家法|e-Gov法令検索 ↗
第27・28条(貸主からの解約等)、第38条第7・8項(一定の定期建物賃貸借の中途解約)。2022年改正後の項番号で確認。
- 契約のモデル賃貸住宅標準契約書|国土交通省 ↗
平成30年3月版・家賃債務保証業者型の公式掲載ファイルを確認。2024年12月の特約例追加等を含む案内。第6・11・14・15条を参照。利用が義務付けられた契約書ではない。
- ガイドライン原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省 ↗
公式掲載の再改訂版(2011年8月)。第1章・別表1、2(原因、範囲、経過年数)、別表4(精算明細例)を確認。法律ではなく一般的な基準。
- 公的な助言賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!|国民生活センター ↗
2026年2月17日公表。契約確認、入退去時の記録、修繕の連絡、請求に納得できない場合の確認と相談。