何がよいかは、結果で決まるか。
歴史と問い
行為の結果を評価する
功利主義は、行為や制度が幸福や苦痛にどのような影響を与えるかを重視します。ベンサムは快楽と苦痛を評価の中心に置きました。ミルは快楽の質も論じます。「多くの人が喜べば、少数者に何をしてもよい」という標語だけでは、権利や長期的な影響をめぐる論争を説明できません。
自由と他者への害
ミルの自由論は、個人の自由をどこまで社会が制限できるかを問い直しました。他者への害を防ぐという危害原理は、何でも自由という意味でも、不快なら何でも禁止するという意味でもありません。何を害と呼ぶか、誰が判断するか、制度がどこまで及ぶかという課題が残ります。
意味を実践から考える
プラグマティズムは、概念を使うことで生じる実践的な帰結に注目します。パースは信念や探究の方法を、ジェームズは経験と生の多様さを、デューイは学びや民主主義の問題を論じました。「役に立てばどんな嘘でも真」という単純な説明では、証拠や探究の役割を捉えられません。
探究は修正される
デューイは、問題のある状況を調べ、仮説を立て、実行と検討を通じて状況を変える探究を重視します。正しい方法が一度で永久に確定するという見方より、誤りうる判断を公共的に検討する過程が重要になります。功利主義とプラグマティズムを、どちらも結果に注目するという理由だけで同一の立場にしないように比較しましょう。
議論を深く読む
結果を見る倫理の強さ
功利主義は、行為の評価を身分や慣習だけに頼らず、関わる人の幸福や苦痛への影響から考えます。他人の苦痛を自分と同じ重さで扱う要求には批判的な力があります。一方、全体の利益を増やすために一人の権利を犠牲にしてよいかという難問が現れます。評価の対象が行為か規則か、幸福を何とみなすかによって立場が分かれます。
ミルの自由を読む
他人への危害を防ぐ場合と、本人のためだとして干渉する場合を区別する議論は、自由の限界に関わります。思想と討論の自由は、誤った意見の保護だけではありません。正しいとされる意見も反論にさらされなければ、理由のない慣習になりかねないという問題があります。自由と幸福の関係を著作全体で確認します。
探究としてのプラグマティズム
概念の意味を実践的な帰結から考えることは、目先の利益になるなら何でも真という立場と同じではありません。何をすればどんな違いが生じるかを明確にし、探究の中で判断を検証します。パース、ジェイムズ、デューイは真理、経験、共同的な探究の説明でも異なります。便利という日常語だけで一括しないことが必要です。
論証の筋道
この章の議論を読むための整理です。原典の論証をそのまま逐語的に再現したものではありません。
影響を同じ尺度で検討する
行為が誰にどんな幸福・苦痛をもたらすかを問う。利益を受ける者だけを数える説明を避ける。
自由の限界を理由づける
危害の防止、本人の利益、社会の不快感を区別する。干渉を支持する側にも根拠を求める。
概念を探究に置く
信念が実践と経験の中で何を変えるかを確かめる。真理を個人のそのときの好みに還元しない。
反論と残る問題
最大化の負担と少数者の権利
常に最大の利益を求める倫理は、個人にどこまで犠牲を要求するのでしょうか。権利を守る規則を採ればよいとしても、その規則の例外をどう扱うかが残ります。結果を考える強さと、集計で失われるものを併せて検討します。
原典を読む
読む場所と読みどころを示します。「研究解説・文献案内」のリンク先は原典本文ではありません。邦訳の書名、章番号、訳語は版によって異なる場合があります。
PRIMARY READING
『自由論』
読む場所:第1章・第2章
干渉の原理と、討論の自由を支える理由を読む。自由を何の条件もない権利とだけ理解しない。
英語本文・版情報本文・版情報を開く ↗PRIMARY READING
「いかにしてわれわれの観念を明晰にするか」
読む場所:実践的帰結と概念の明晰さを論じる部分
何を意味するかを、考えられる経験上の差から確かめる方法を読む。短期的な成功の賛美と区別する。
研究解説・文献案内研究解説・文献案内を開く ↗自分で考える
YOUR REASONING
多数の小さな利益と、一人の重大な損害は、同じ計算の中で比較できるでしょうか。
自分の主張、支える理由、最も強い反論を書き出してみてください。一つの正解を選ぶ問いではありません。
用語の確認
意味を確かめたい項目だけ開いてください。本文で論じた文脈に即した短い説明です。
ベンサム
行為や制度の帰結を評価する考え方を体系的に論じました。
確認する論点:快楽と苦痛を基準とする功利主義で知られる人物は
幸福や苦痛への帰結
何がよい帰結かや、どの範囲の人を考えるかも論点になります。
確認する論点:功利主義が行為を評価する際、特に重視するものは
快楽計算
数値化の可能性や限界を含め、行為の帰結を比較する考え方です。
確認する論点:快楽の強さや持続などを評価するベンサムの構想は
ジョン・スチュアート・ミル
ミルは単に量だけで快楽を比較することを問い直しました。
確認する論点:快楽の質の違いも論じた功利主義者は
危害原理
他者への害と、単に不快なことを区別して考える必要があります。
確認する論点:ミルの『自由論』に関わる、他者への害を防ぐ基準は
害の意味と制限の範囲を検討する
実際の適用には、害や社会的な影響についての議論が必要です。
確認する論点:危害原理を読む際の適切な理解は
少数者の権利をどう扱うか
幸福の集計と権利、平等、分配の関係は大きな論争点です。
確認する論点:功利主義の帰結の評価に対して生じる重要な問いは
プラグマティック・マキシム
概念の意味を、その違いが実践にどう現れるかから検討します。
確認する論点:概念をその実践的な帰結から明確にするパースの方法は
チャールズ・サンダース・パース
探究、記号、推論についての独自の議論を展開しました。
確認する論点:プラグマティズムの初期の重要な人物は
ウィリアム・ジェームズ
パースと共通点を持ちつつ、同じ一つの理論ではありません。
確認する論点:経験の多様さやプラグマティズムで知られるアメリカの人物は
ジョン・デューイ
経験、学び、公共的な問題解決を結びつけて論じました。
確認する論点:教育と民主主義を探究の過程から考えた人物は
経験を通じた学びと検討
行為と結果の振り返りが、学びを変える働きを持ちます。
確認する論点:デューイの教育論に近い考えは
可謬主義
誤りの可能性を認めることは、理由や証拠の検討を放棄する意味ではありません。
確認する論点:知識や判断が誤りうることを認める立場は
探究と証拠の役割を考える
実践的な帰結は、私的な利益だけで決めることと同じではありません。
確認する論点:プラグマティズムについて不適切な単純化を避けるには
問題・仮説・実行・検討を関係づける
仮説が状況をどう変えるかを調べ、必要なら修正します。
確認する論点:デューイの探究の方法として適切なのは
結果への関心があっても同一の理論ではない
倫理的評価と概念・探究の方法など、問題の位置づけが異なります。
確認する論点:功利主義とプラグマティズムの関係として適切なのは
研究資料
人物・概念・著作の確認に用いる学術解説です。原典への書誌案内は各記事のBibliographyも参照してください。
- Jeremy BenthamStanford Encyclopedia of Philosophy
- John Stuart MillStanford Encyclopedia of Philosophy
- PragmatismStanford Encyclopedia of Philosophy