権力は、何によって正当化されるか。
歴史と問い
国家の正当性を問う
社会契約論は、国家や法がなぜ人々を拘束できるかを問います。自然状態は、必ずしも実際の歴史上の一時期を報告するものではなく、制度のない条件を考えるための構想です。ホッブズ、ロック、ルソーは、同じ言葉を使っても人間の関係や政治への答えが異なります。
安全と権利
ホッブズは安全の不安定さを考え、強い共通の権力の必要性を論じました。ロックは生命・自由・財産などの権利と、政府への同意、権力の制限を論じます。国家の必要を説明することと、国家が何をしてもよいことは同じではありません。統治の目的と、権力をどこで制限するかを比べましょう。
自由と一般意志
ルソーは、社会の不平等や、市民が共同で法を立てる自由を問い直しました。一般意志は、個々の欲望の単なる合計と同じではありません。共同の利益を志向することと、実際の多数者の判断が常に正しいことも区別されます。誰が公共性を定義し、反対する者をどう扱うかという難しさが残ります。
普遍性の約束と排除
啓蒙は理性や自由、平等を掲げましたが、女性、奴隷化された人々、植民地の人々が現実には排除されることもありました。ウルストンクラフトは女性の教育と権利を論じます。普遍的な主張を、その時代の適用範囲や制度と照らして読むことが重要です。「誰の自由か」という問いを忘れないようにしましょう。
議論を深く読む
契約は歴史の出来事なのか
社会契約の議論は、すべての国家が実際に全員の署名で始まったという報告とは限りません。なぜ権力に従う理由があり、どの条件でその権力が正当かを説明する装置として読む必要があります。自然状態も同じ一つの景色ではありません。安全、権利、自由についての出発点が異なると、導かれる国家像も変わります。
安全と自由の異なる組み立て
ホッブズでは、暴力の恐怖と相互不信から、安全を担う主権の必要が論じられます。ロックでは権利の保護と政府の限界が重要になります。ルソーの一般意志は、私的な利益を足したものと同一ではありません。共同の立法に参加し、自分が従う法との関係で自由を考える点に独特の難しさがあります。
普遍を語りながら排除すること
自由や理性を普遍的に語る時代にも、女性、被植民者、奴隷にされた人々への排除が続きました。ウルストンクラフトは、女性の教育と判断能力をめぐる慣習を問い直します。普遍的な原理の意義を認めることと、その原理が誰に適用されていたかを問うことは両立します。後者を補足にせず、正当化の内部の問題として読みます。
論証の筋道
この章の議論を読むための整理です。原典の論証をそのまま逐語的に再現したものではありません。
権力が解決する問題を特定する
安全、財産、自由、平等の何を保障するかを確かめる。目的の違いが制度と権力の限界に影響する。
同意の意味を問う
実際の同意、暗黙の同意、仮想的な合意を区別する。同意していない人に義務を求める理由がなお問題になる。
原理の適用範囲を調べる
誰が契約の当事者とみなされるかを見る。理性的な主体の定義自体が排除の根拠になっていないかを考える。
反論と残る問題
一般意志と多数決
多数決は共同の判断を出す一つの手続きですが、その結果が常に共通の利益を示すとは限りません。ルソーの議論を、多数者なら少数者を自由に強制してよいという命題に縮めないことが必要です。
原典を読む
読む場所と読みどころを示します。「研究解説・文献案内」のリンク先は原典本文ではありません。邦訳の書名、章番号、訳語は版によって異なる場合があります。
PRIMARY READING
『社会契約論』
読む場所:第1編・第6〜8章、第2編・第3章
結合の問題、自由の意味、一般意志と全体意志の区別を追う。一般意志を集計結果の別名にしない。
英訳本文本文を開く ↗PRIMARY READING
『女性の権利の擁護』
読む場所:第2章・第3章
教育、理性、徳の関係を読む。女性に認められる「役割」と、判断する主体としての地位の違いを考える。
研究解説・文献案内研究解説・文献案内を開く ↗自分で考える
YOUR REASONING
生まれる前から存在する国家に対して、私たちはどの意味で同意したと言えるでしょうか。
自分の主張、支える理由、最も強い反論を書き出してみてください。一つの正解を選ぶ問いではありません。
用語の確認
意味を確かめたい項目だけ開いてください。本文で論じた文脈に即した短い説明です。
ホッブズ
ホッブズは、安全と共通の権力の必要性を中心的に論じました。
確認する論点:『リヴァイアサン』を書いた思想家は
自然状態
自然状態は思想家ごとに違い、実際の歴史の記録と同じではありません。
確認する論点:社会契約論で、共通の政治権力のない条件を考える構想は
不安定な安全を確保するため
安全と平和を成立させる条件が重要な問題です。
確認する論点:ホッブズが共通の権力を必要とした主要な理由は
主権
主権の位置や制限について、政治哲学には異なる立場があります。
確認する論点:政治共同体で最終的な統治権力に関わる概念は
ロック
政府、同意、権利などを論じる政治哲学の重要な著作です。
確認する論点:『統治二論』で知られる人物は
生命・自由・財産
政治権力の目的や制限を考える際、権利が重要な基準となります。
確認する論点:ロックの政治論で重要な自然権の組は
統治される人々の同意
同意をどう理解するかには論点があり、現代制度とそのまま同じではありません。
確認する論点:ロックが政治権力の正当性で重視したものは
抵抗の正当化
政府の権力は目的と条件を持つものとして論じられます。
確認する論点:ロックの議論で、政府が信託を大きく破った場合に関わるものは
ルソー
自由と共同の法、政治的な正当性を論じます。
確認する論点:『社会契約論』を書いた思想家は
一般意志
一般意志は共同の利益を志向する意志として論じられます。
確認する論点:ルソーが個々の欲望の合計と区別した概念は
個別の意志の合計
全体意志と一般意志は、単純に同義ではありません。
確認する論点:ルソーの全体意志の説明に近いものは
多数者の判断が常に共通善とは限らない
公共的な利益を志向することと、実際の集計結果を区別します。
確認する論点:一般意志と多数決の関係について適切なのは
ルソー
制度や所有、社会の形成との関係で不平等を問い直しました。
確認する論点:『人間不平等起源論』で不平等を考えた人物は
ウルストンクラフト
女性の教育と権利を、理性と人格の形成との関係で論じました。
確認する論点:『女性の権利の擁護』で知られる思想家は
誰が実際にその権利から排除されたか
理念と実際の適用範囲を照合することが必要です。
確認する論点:啓蒙の自由・平等の主張を歴史的に読む際の重要な問いは
政治制度の条件を考える構想として読む
議論の目的と、思想家ごとの条件設定を確認します。
確認する論点:自然状態を用いる議論の理解として適切なのは
安全・権利・同意・自由の位置づけ
共通の語を使う場合にも、何を正当化し何を制限するかが異なります。
確認する論点:社会契約論の思想家を比較する際に有効な軸は
研究資料
人物・概念・著作の確認に用いる学術解説です。原典への書誌案内は各記事のBibliographyも参照してください。
- Hobbes’s Moral and Political PhilosophyStanford Encyclopedia of Philosophy
- Locke’s Political PhilosophyStanford Encyclopedia of Philosophy
- Jean Jacques RousseauStanford Encyclopedia of Philosophy
- Mary WollstonecraftStanford Encyclopedia of Philosophy