PART 06 / CHAPTER 22

第22章
石油危機と市場改革

ガソリンだけの話ではない。

1970年代以降国際経済と各国エネルギー・国家・お金
OPENING PICTURE / PART 6

豊かさの、その先へ

技術と市場暮らしの時間環境と分配

所得だけでなく、時間・ケア・環境から経済を見直す。

本書独自の象徴的な挿絵。特定の都市・時代の復元図ではありません。数値のない折れ線は統計を表していません。
01 / READ THE HISTORY

エネルギーの価格が広く届く

石油は移動だけでなく、生産、運搬、化学製品、暖房などに関わります。供給や価格の変化は、複数の産業の費用を変えます。1970年代の石油危機を読むときには、産油国、輸入する国、企業、家計で影響が違う点が重要です。一方、当時の物価上昇のすべてを石油だけに帰すことはできません。

金融政策、賃金、期待、為替などの条件も関わります。引き金と、影響が広がるしくみを分けて読みます。

02 / READ THE HISTORY

成長と物価の難しい組合せ

不況なら物価の圧力も弱いという単純な図では、供給の費用が上がる局面を扱いにくくなります。雇用が弱まりながら物価が上がる状況では、どの問題をどの手段で軽くするかが難しくなります。金利を上げる対応は物価への圧力を抑える方向に働く一方、投資と雇用に負担を与える場合があります。

政策に費用がないと考えず、誰がどの時期に負担を受けるかを確認します。

03 / READ THE HISTORY

為替の約束も変わる

1971年の米国によるドルと金の交換の停止は、戦後の通貨体制の変化の節目です。その後、固定的な為替から変動する為替へ移る過程には国際的な調整がありました。為替が動くと、輸入品、輸出、国外の債務の条件が変わります。通貨の価格を、国全体の成績を一つの数で評価するものとして扱うことはできません。

輸出する企業と輸入に頼る家庭で、同じ動きの影響が異なる場合があります。

04 / READ THE HISTORY

改革の評価を分ける

市場の役割を広げる改革、民営化、規制の見直し、金融の自由化などには異なる目的と方法があります。一つの名称で、どの国でも同じ結果になると考えないことが必要です。競争が改善する場合も、監督や生活の保障の条件が弱まる場合もあります。改革への賛否を決める前に、どの制度が変わり、料金、雇用、投資、権限に何が起きたかを調べます。

効率と分配、短期と長期を分けて評価します。

買い物のレンズ

運ぶ費用が、食料の値段へ

架空の店で仕入れの品が同じでも、輸送の燃料費が上がれば費用は変わります。値上げするか、利益を減らすか、運び方を変えるかは、競争と契約の条件にも左右されます。石油の価格から店の値札までの間に、複数の選択があることを考える例です。歴史上の全価格を一つの費用で説明するものではありません。

VISUAL NOTE

しくみを図で読む

エネルギーの波及

  1. 01エネルギーの条件が変わる
  2. 02生産と輸送の費用が変わる
  3. 03価格と賃金へ影響する
  4. 04企業・家計・政策が対応する
費用の変化が全額同じ速さで値札に移るとは限らない。
関係を整理する模式図です。規模・量・時間の比率を示す統計図ではありません。

学習用の模型で、条件を動かしてみる →

A USEFUL DISTINCTION

ここを区別する

インフレの原因は、いつも同じ?

需要、供給、為替、期待、制度を分けて考えます。一つの時代の説明をすべてに当てはめません。

THINK FROM YOUR LIFE

自分で考える

値上げを、需要が増えた場合と、供給の費用が上がった場合で分けると、対応はどう違うでしょうか。

自分の説明と、それを支える理由を書き出してみてください。決まった一つの答えを選ぶ問いではありません。
WORDS & IDEAS

基本用語

スタグフレーション

経済の停滞と物価上昇が重なる状況。需要だけの単純な説明では扱いにくい場合があります。

民営化

公的な事業などの所有・運営を民間へ移すこと。競争と規制の条件を併せて検討します。

変動相場

通貨の交換の価格が市場などの条件で動く仕組み。国家の政策が全く関わらないという意味ではありません。

THE EDITOR’S VISUAL FILE

同じ23ポンドで、同じ買い物ができる?

英国の物価指数の例では、1975年に23ポンドだった商品・サービスの組み合わせが、1985年には約57.68ポンドに相当します。物価の上昇を、買い物の金額として見てみましょう。

出典のあるデータ · 英国の物価指数の換算例
1975年
23£
1985年
57.68£
横棒の起点は0ポンド、最大目盛は60ポンド。1975年の23ポンドを基準とした相当額。毎年の推移を表す図ではありません。
23 × 44.6 ÷ 17.78 ≈ 57.68

17.78と44.6は、英国中央銀行の説明にある1975年と1985年の物価指数です。1988年以前のCPIはRPI資料に基づく推計で、個々の商品がすべて同じ割合で値上がりしたことを意味しません。指数の比から求めた相当額であり、実際の世帯の支出記録ではありません。

出典:Bank of England, Inflation calculator / How the inflation calculator works ↗。値は同資料の換算例。読み取った値と計算式を併記しています。

SOURCES TO EXPLORE

資料を読む

資料の性格と読むポイントを示します。一次資料を扱うリンクでも、目録や解説を介して本文に進むものがあります。本書の文章は独自の解説で、原資料の逐語訳ではありません。

全24章の目次