海と道が、暮らしをつなぐ
港に届くものは、どこかの土地と仕事につながっている。
本書独自の象徴的な挿絵。特定の都市・時代の復元図ではありません。数値のない折れ線は統計を表していません。アフリカを、外から来た人の市場にしない
サハラを越える交易は、北アフリカとサハラ以南を結び、金、塩などの品が動く場でした。隊商と国家、商人の資金と地域の生産が関わります。古代ガーナやマリの歴史を、現代の国境で一つずつ区切ることはできません。さらに、サハラ交易だけが大陸全体の経済を代表するわけでもありません。
農業、牧畜、都市、沿岸交易などの違いを残して読みます。アフリカの経済は、奴隷貿易の説明が始まる前から存在していました。
交易は、地域の仕事に根を持つ
金が遠くの貨幣に使われても、採取、輸送、食料の供給、取引の仲介は具体的な場所の仕事です。支配者が交易の通路や徴収を管理すれば、政治の力と商業の利益が結びつきます。一方、交易品の価格は遠方の需要にも左右されます。品が国際的になるほど、その品を作る人の暮らしが自動的に豊かになるわけではありません。
利益がどこへ集まり、危険を誰が負ったかを確認する必要があります。
市場だけでは説明できない配分
アメリカの諸社会には、異なる土地利用、交易、徴収、労働の仕組みがありました。インカの道路と行政を例にすると、国家への労働の提供、保管、移動を通じた資源の配分も重要になります。貨幣や市場の有無だけで経済の発達を一列に順位づけると、暮らしを維持する別の仕組みが見えません。
同時に、共同的な配分があるから誰もが同じ権限を持ったと決めつけることもできません。
資料の声を比べる
交易品、道、倉庫、住居、口承、外部の記録は、それぞれ違うことを示します。征服者や旅行者の記述には、驚き、利害、理解の限界が含まれます。外部の人が残した文字だけを唯一の事実とすると、現地の人々の知識と活動が背景に押しやられます。博物館や研究機関の解説も使いながら、資料を誰が作り、何を目的としたかを問います。
植民地化以前の社会を、変わらない一枚の風景として描かないことが大切です。
資料のレンズ
道から読む、ものの移動
長い道を見て「交易路」と名づけるだけでは、その道が運んだものは分かりません。食料、役人、軍、情報、人の労働など、目的は複数ありえます。保管場所と道の位置を合わせて考えると、資源の配分の仕組みが見えてきます。道路が残っていることから、現代の商店と同じ市場があったと自動的に推論しないようにします。
しくみを図で読む
資源が地域をつなぐ
- 01地域で生産する
- 02道と拠点を維持する
- 03物と人が移る
- 04保管・利用・配分する
関係を整理する模式図です。規模・量・時間の比率を示す統計図ではありません。
ここを区別する
貨幣がなければ、経済もない?
生産と資源の配分には複数の形があります。現在の市場の仕組みを、すべての時代の物差しにしないことが必要です。
自分で考える
外から来た人の記録と、現地の物や道の資料は、どんな違うことを教えるでしょうか。
自分の説明と、それを支える理由を書き出してみてください。決まった一つの答えを選ぶ問いではありません。基本用語
再分配の拠点
集めた資源を保管し、別の場所や目的に配る場所。集める権限と配る基準に注目します。
隊商
人や荷をまとめて移動する集団。輸送、保護、食料、資金の条件が交易を支えます。
資料批判
資料の作成者、目的、成立、残り方を検討して読む方法。疑うだけでなく、何を根拠に使えるかを考えます。
資料を読む
資料の性格と読むポイントを示します。一次資料を扱うリンクでも、目録や解説を介して本文に進むものがあります。本書の文章は独自の解説で、原資料の逐語訳ではありません。
- 博物館・研究解説
サハラを越えた金交易 ↗The Metropolitan Museum of Art読みどころ:金、塩、隊商、地域の国家。古代ガーナと現代の国の境界を同一視しない。
- 博物館・教育資料
インカの道路と帝国 ↗Smithsonian Institution読みどころ:道路、行政、資源と人の移動。近代の市場だけを経済の基準にしない。
- 教育・研究解説
制度・権力・分配 ↗CORE Econ読みどころ:所有、交渉力、制度と分配の関係。学習用モデルの前提を確認する。