公共・倫理 第1回
問題・解説一覧
全32問・100点。資料や会話・表の数値は編集部作成です。
問1 · 第1問 公共:対話と公正な社会(3点)
会話:図書館の利用時間(創作)
市立図書館の開館時間について、生徒Aは「アンケートで夜間延長に賛成が多かったから決定してよい」と述べた。生徒Bは「昼間しか利用できない人や職員への影響も調べ、理由を示して議論しよう」と応じた。
Bの考え方に最もよく対応する公共的な意思決定の進め方はどれか。
- 対立が存在する場合は公共の問題として扱わず、判断を私人に任せる。
- 集計で最多だった案の根拠を検討しないことを、公平な手続と考える。
- 影響を受ける当事者よりも、発言回数の多い人の案を優先する。
- 関係者への影響を検討し、異なる立場からの理由も吟味する。
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正解:4.関係者への影響を検討し、異なる立場からの理由も吟味する。
公共的な決定では、多数決に加えて理由の検討や少数者への配慮が重要になる。Bは全員の希望が必ず一致すると述べているのではなく、影響を調べ議論の質を高めようとしている。
問2 · 第1問 公共:対話と公正な社会(3点)
提案:入口の改修(創作)
段差のある図書館では、全員が同じ入口を使うというルールがある。しかし車いすの利用者は入口を通れない。改修案では、段差を解消し、通路の幅も確保する。
この改修案を説明するものとして最も適切なのはどれか。
- 利用者の違いを理由に、公共施設への参加を一律に別制度へ移す。
- すべての人に同じ身体的条件があると想定して設備を統一する。
- 同じルールの形式的な適用だけでなく、実際に参加できる条件を整える。
- 施設へのアクセスを、利用者個人の努力だけで解決する。
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正解:3.同じルールの形式的な適用だけでなく、実際に参加できる条件を整える。
形式的に同じ扱いでも、障壁によって実際の機会が異なることがある。改修は特定の人の価値を高く評価するためではなく、施設を利用する機会を確保するための取組である。
問3 · 第1問 公共:対話と公正な社会(3点)
二つの予算案(創作)
案Pは多くの利用者の待ち時間を短くする。案Qは利用者数が少ないものの、代替施設のない地域への移動図書館を維持する。予算上、両案をそのまま実施できない。
効率と公正の観点をともに含む検討として最も適切なのはどれか。
- 便益の合計だけを調べれば、誰に負担が集中するかは検討不要である。
- 利用者数や費用に加えて、代替手段の有無や負担の偏りを比較する。
- 代替施設がないという理由がある場合は、費用の情報を集めてはならない。
- 両案が異なる価値を含むので、条件を調整した第三案は検討できない。
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正解:2.利用者数や費用に加えて、代替手段の有無や負担の偏りを比較する。
効率は限られた資源でどれだけの成果を得るか、公正は機会や負担などをどう扱うかに関わる。両者を区別し、複数の観点から案を比較することが求められる。
問4 · 第1問 公共:対話と公正な社会(3点)
討論ルールの見直し(創作)
討論でAは「自分が反対側だったら、この決め方を受け入れられるかも考えたい」と述べた。Bは「相手の主張を言い換えて確かめてから反論するルールを置こう」と提案した。
AとBに共通する姿勢として最も適切なのはどれか。
- 他者の立場を想像し、相互に検討できる理由を交換する姿勢。
- 相手の価値観に完全に同意してからでなければ議論しない姿勢。
- 自分の利害を持たない人だけに決定への参加を認める姿勢。
- 意見の相違を発見したら、相手の発言を議事録から除く姿勢。
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正解:1.他者の立場を想像し、相互に検討できる理由を交換する姿勢。
他者の立場を理解しようとすることは、相手への全面的な同意と同じではない。主張を確かめ、理由に応じて自分の意見も見直せる関係が、対話を支える。
問5 · 第2問 公共:権利・法・調査(3点)
社会契約をめぐる授業メモ(要点の再構成)
ある政治思想では、人には政治権力に先立つ権利があり、政治権力はその保全のために信託されると考える。政府が信託に反する場合の抵抗も論じられる。
このメモに最もよく対応する思想家と説明の組合せはどれか。
- モンテスキュー — 抵抗権のために立法・行政・司法を同一人へ集中させた。
- ホッブズ — 一般意志に全員が直接従う共和政を中心に論じた。
- ルソー — 財産保護だけを国家の目的とし一般意志を退けた。
- ロック — 生命・自由・財産などの自然権を保全する政治を構想した。
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正解:4.ロック — 生命・自由・財産などの自然権を保全する政治を構想した。
ロックは自然権の保全と統治の信託を論じた。一般意志はルソー、権力の分立はモンテスキューに関わる。ホッブズの強い主権による秩序形成とも区別する。
問6 · 第2問 公共:権利・法・調査(4点)
ルールの正当性(創作)
生徒A「手続を踏んで成立した法律なら、権力の使い方はすべて正当なのかな。」
生徒B「権力そのものを拘束し、権利を保障するという観点からも考える必要があるよ。」
Bの発言に合致する記述を選べ。
- 立憲主義は、憲法によって市民の意見を一つに統一することを主目的とする。
- 法の支配とは、権力者の命令に法律という名称を付ければよいという原理である。
- 法の支配は、権力者も法に拘束されることや権利保障を重視する。
- 権力分立は、機関相互の抑制をなくすためにすべての権限を一元化する原理である。
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正解:3.法の支配は、権力者も法に拘束されることや権利保障を重視する。
法の支配や立憲主義は、公権力を規律し権利を保障する考え方である。法律の形式があるという事実と、その内容や運用が基本原理に適うかという評価は区別する。
問7 · 第2問 公共:権利・法・調査(3点)
自由と制約(創作)
公共空間での表現について、「不快に感じる人がいるだけで禁止してよいのか」「他者に具体的な危害を及ぼす場合はどうか」という意見が出た。
ミルの他者危害原則の説明として最も適切なのはどれか。
- 本人の幸福を増やすと多数者が判断すれば、あらゆる行為を強制できるとする。
- 他者への危害を防ぐことを、本人の意思に反して自由を制約する根拠として重視する。
- 社会の多数者と異なる意見は、それだけで他者への危害とみなす。
- 自由の問題を行為者の動機だけで判断し、他者への影響を考慮しない。
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正解:2.他者への危害を防ぐことを、本人の意思に反して自由を制約する根拠として重視する。
ミルは他者に対する危害の防止を強制の根拠として論じた。単なる不快感や多数者の好みと、自由を制約し得る危害とを安易に同一視しないことが重要である。
問8 · 第2問 公共:権利・法・調査(3点)
相談窓口の利用調査(架空)
市は相談窓口をオンライン化した。次の表は同じ人数を対象に実施した、変更前後の利用率を示す架空データである。年齢以外の条件や非利用の理由は調べていない。
資料から直接いえることと、今後必要な調査の組合せとして最も適切なのはどれか。
- 若年層は15ポイント上昇し高年層は15ポイント低下した。利用環境や非利用理由も調べる必要がある。
- 両層とも15%ずつ利用者数が変化した。年齢以外の情報を得ても解釈は変わらない。
- 高年層の利用率低下だけから、全員がオンライン化に反対したと断定できる。
- 変更前の利用率が同じなので、変更後の差は必ず個人の努力の差だけで説明できる。
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正解:1.若年層は15ポイント上昇し高年層は15ポイント低下した。利用環境や非利用理由も調べる必要がある。
45−30=15、15−30=−15で、変化の単位はパーセントポイントである。利用率だけから賛否や原因は断定できない。アクセス環境などを調べ、因果の説明と観察された差を区別する。
問9 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
対話:「善い生き方」を考える(創作)
A「善い人とは、周囲にいつも褒められる人だと思う。」
B「悪いことをしても褒められる場合があるなら、その定義で十分かな。そもそも善いとは何だろう。」
Bの問い方とソクラテスの思想との関係として最も適切なのはどれか。
- 知識を持たないと認めた人には、その後の対話への参加を認めない。
- 多数の賛同が得られた定義は、反例による検討の対象から外す。
- 自然の構成元素を確定することだけを、魂への配慮と呼ぶ。
- 自分や相手が知っていると思うことを吟味し、魂のあり方を問う。
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正解:4.自分や相手が知っていると思うことを吟味し、魂のあり方を問う。
ソクラテスの問答は、知っているつもりの内容を吟味する。無知の自覚は探究の放棄ではなく、その出発点となる。多数者の賞賛を善の基準と決めつける姿勢とは異なる。
問10 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
二つの整理メモ(要点の再構成)
メモP:変化する感覚的な事物と、知性によって捉える真実在とを区別する。
メモQ:人の徳は実践や習慣により形成され、適切な仕方で感情や行為を選ぶことが重要である。
思想家とメモの対応として正しいものを選べ。
- P:エピクロス/Q:プロタゴラス。
- P:アリストテレス/Q:プラトン。
- P:プラトン/Q:アリストテレス。
- P:プロタゴラス/Q:エピクロス。
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正解:3.P:プラトン/Q:アリストテレス。
Pはイデアを重視するプラトンに対応する。Qはアリストテレスの習慣による徳や中庸と関わる。中庸は常に数量的な中間を選ぶことではなく、状況に即した適切さを含む。
問11 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
幸福についての比較(創作)
A「制御できない外的な出来事に振り回されず、理性に従って生きることを考えたい。」
B「快楽を重視しても、刺激を際限なく求めるのではなく、心の平静を大切にする立場がある。」
A・Bに対応する思想の説明として最も適切なのはどれか。
- Aはストア派の外的成功への従属、Bはエピクロスの欲望の無制限な充足に関わる。
- Aはストア派の自然・理性に従う生き方、Bはエピクロスの平静を重視する快楽説に関わる。
- Aはエピクロスの禁欲のみを目的とする立場、Bはストア派の感覚的刺激の最大化に関わる。
- AもBも、哲学的な思索によって生き方を変えることはできないという立場である。
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正解:2.Aはストア派の自然・理性に従う生き方、Bはエピクロスの平静を重視する快楽説に関わる。
ストア派は自然や理性に従う生き方を重視した。エピクロスは苦痛や心の動揺を避ける平静な生活を論じており、単なる放縦を説いたのではない。
問12 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
宗教思想の比較メモ(編集部作成)
P:神との契約や律法が共同体の生き方に関わる。
Q:神への愛と隣人への愛が結び付けられ、敵への愛も説かれる。
R:唯一神への帰依を重視し、信仰生活に礼拝や喜捨などの実践が位置付けられる。
P・Q・Rの対応として最も適切なのはどれか。
- P:ユダヤ教/Q:キリスト教/R:イスラーム。
- P:キリスト教/Q:イスラーム/R:ユダヤ教。
- P:イスラーム/Q:ユダヤ教/R:キリスト教。
- P:ユダヤ教/Q:イスラーム/R:キリスト教。
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正解:1.P:ユダヤ教/Q:キリスト教/R:イスラーム。
Pはユダヤ教、Qはキリスト教、Rはイスラームの基本的な教えに対応する。三者は唯一神信仰などで関わりを持つ一方、歴史や実践には相違と多様性がある。
問13 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
苦しみについての授業メモ(再構成)
物事はさまざまな条件によって生じ、固定的で独立した実体として存在するのではない。変わりゆくものを変わらないものとして執着することは、苦しみと結び付く。
このメモと仏教思想との関係として最も適切なのはどれか。
- 苦の理解は、欲望の対象をすべて獲得すれば完成するとされる。
- 縁起とは、あらゆる存在が他の条件と無関係に成立するという教えである。
- 無常とは、人間の行為の結果だけが永遠に固定されるという教えである。
- 縁起や無常の理解を通じて、執着と苦しみの関係を捉える。
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正解:4.縁起や無常の理解を通じて、執着と苦しみの関係を捉える。
縁起は諸条件の相互関係によって物事が成立すること、無常は変化し続けることに関わる。仏教は、固定的な自己や対象への執着と苦の関係を問う。
問14 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
人の成長をめぐる三つの立場(再構成)
Pは他者を思いやる仁と、それを具体的に表す礼を重視した。Qは誰にも善へ向かう心の芽生えがあるとして、その拡充を説いた。Rは人の欲望をそのままにせず、礼や学習による形成を重視した。
思想家の対応として正しいものを選べ。
- P:墨子/Q:孟子/R:老子。
- P:孔子/Q:荀子/R:孟子。
- P:孔子/Q:孟子/R:荀子。
- P:老子/Q:荀子/R:墨子。
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正解:3.P:孔子/Q:孟子/R:荀子。
孔子は仁と礼、孟子は性善説や四端、荀子は性悪説と礼・学習を重視した。孟子も荀子も教育を不要とするのではなく、人間形成の出発点の捉え方が異なる。
問15 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
競争をめぐる話合い(創作)
「人為的な価値の区別にとらわれ、競争を強めるほど苦しみが増えるのではないか。無理に操作するのでなく、自然なあり方に目を向けたい」という意見が出た。
この意見に近い老子の考え方を表すものはどれか。
- 法令と刑罰の厳格化だけが自然な秩序を生むとする。
- 無為自然を重視し、人為的な作為や欲望の拡大を問い直す。
- すべての関係を序列化し、礼の形式を増やすことだけを重視する。
- 名声と富の競争で勝つことを、人為を離れた生き方と呼ぶ。
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正解:2.無為自然を重視し、人為的な作為や欲望の拡大を問い直す。
老子の無為自然は、作為や過剰な欲望を問い直す考え方である。何も考えず無責任に振る舞うことと同じではなく、人為的な支配や価値付けへの批判を含む。
問16 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(3点)
二つの判断理由(創作)
P「約束を守るのは、それが都合のよい結果を生む場合だけではない。他の人にも同じように求め得る原則かを考える。」
Q「施策による幸福への影響を比較したい。ただし快楽は量だけでなく質の違いも考えたい。」
P・Qと近代倫理思想との関係として最も適切なのはどれか。
- Pはカントの普遍化を問う道徳原理、Qはミルの質も考慮する功利主義に関わる。
- Pはカントの欲望への従属、Qはミルの快楽の質の差の否定に関わる。
- Pはベンサムの結果評価、Qはカントの幸福の量的計算に関わる。
- PもQも、他者の立場や幸福は道徳判断と無関係だという立場である。
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正解:1.Pはカントの普遍化を問う道徳原理、Qはミルの質も考慮する功利主義に関わる。
カントは格率の普遍化可能性や人格への尊重を重視する。ミルは功利主義を展開し、快楽の質的な違いも論じた。ベンサムの量的な快楽計算とも区別する。
問17 · 第3問 倫理:源流思想と近代の問い(4点)
主権と自由の探究(要点の再構成)
A:共通の権力がない状態での不安を踏まえ、平和のために主権の確立を求める。
B:人々が共同の立法に参加し、一般意志に従うことと自由の関係を考える。
C:権利の保障のため、政治権力の委託とその限界を重視する。
対応と比較を正しく述べたものを選べ。
- Aはルソー、Bはロック、Cはホッブズであり、三者とも政治権力に先立つ同一内容の権利論を説いた。
- Aはロック、Bはホッブズ、Cはルソーであり、三者とも政府への権力集中だけを目的とした。
- Aはホッブズ、Bはルソー、Cはロックであり、一般意志は個々の私的欲求の単純な合計と同一である。
- Aはホッブズ、Bはルソー、Cはロックであり、社会契約を論じても主権や権利の捉え方は異なる。
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正解:4.Aはホッブズ、Bはルソー、Cはロックであり、社会契約を論じても主権や権利の捉え方は異なる。
Aはホッブズの秩序形成、Bはルソーの一般意志、Cはロックの統治の信託に対応する。社会契約という共通項だけで三者を同じ思想と扱わない。一般意志も私的な意志の単純な合計ではない。
問18 · 第4問 倫理:日本の思想(3点)
修行と信仰の比較(編集部作成)
Pは阿弥陀仏の本願に身を任せる他力の信を重視し、自分の善行を救いの条件として誇る態度を問い直した。Qは坐禅を重視し、修行と悟りを切り離さない立場を説いた。
P・Qに対応する思想家の組合せを選べ。
- P:日蓮/Q:法然。
- P:道元/Q:親鸞。
- P:親鸞/Q:道元。
- P:空海/Q:最澄。
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正解:3.P:親鸞/Q:道元。
親鸞は阿弥陀仏の本願と他力の信を重視した。道元は只管打坐や修証一等を説いた。他力を日常の無責任さや他人任せの意味に置き換えないことも重要である。
問19 · 第4問 倫理:日本の思想(3点)
文学を読む姿勢(創作)
生徒は物語の登場人物について、道徳的に正しいかどうかを決めるだけでなく、喜びや悲しみに心が動くあり方を読み取りたいと考えた。
この姿勢と本居宣長の思想との関係として最も適切なのはどれか。
- もののあはれとは、感情をなくしてすべてを抽象的な理に還元することである。
- もののあはれを知る心を重視し、外からの道徳的な型だけで文学を裁かない姿勢に関わる。
- 宣長は国学を退け、西洋の自然科学だけを古典解釈の基準にした。
- 登場人物に共感することは、儒教的な徳目への一致だけで決まるとした。
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正解:2.もののあはれを知る心を重視し、外からの道徳的な型だけで文学を裁かない姿勢に関わる。
宣長のもののあはれは、事物や人の情に触れて心が動くことへの理解に関わる。道徳的評価をそのまま作品理解の唯一の基準にする態度と区別できる。
問20 · 第4問 倫理:日本の思想(3点)
近代の学問と政治(再構成)
Aは身分にとらわれず実学と独立の精神を培うことを説いた。Bは自由民権運動に関わり、人々の自由や権利を思想的に支えた。
思想家の組合せとして最も適切なのはどれか。
- A:福沢諭吉/B:中江兆民。
- A:中江兆民/B:本居宣長。
- A:本居宣長/B:福沢諭吉。
- A:西田幾多郎/B:荻生徂徠。
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正解:1.A:福沢諭吉/B:中江兆民。
福沢諭吉は実学や独立自尊を説いた。中江兆民はルソーの思想の紹介などを通じて自由民権の議論に関わった。近代思想にも複数の方向性があることに注意する。
問21 · 第4問 倫理:日本の思想(3点)
自己と社会をめぐる二つのメモ(再構成)
P:主観と客観に分ける前の直接的な経験を、思索の出発点として考える。
Q:人間を孤立した個人だけでなく、人と人との関係の中で捉え、個人性と共同性の関係を考える。
P・Qの対応として正しいものを選べ。
- P:和辻哲郎の無意識/Q:西田幾多郎の社会契約。
- P:和辻哲郎の純粋経験/Q:西田幾多郎の間柄。
- P:西田幾多郎の物質的欲望/Q:和辻哲郎の共同性の全面否定。
- P:西田幾多郎の純粋経験/Q:和辻哲郎の間柄。
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正解:4.P:西田幾多郎の純粋経験/Q:和辻哲郎の間柄。
西田の純粋経験は主客の分離以前の直接的経験に関わる。和辻は人間の間柄的な存在を論じた。共同性を重視することを個人の全面否定と短絡させない。
問22 · 第4問 倫理:日本の思想(3点)
地域の被害と社会(創作)
地域の環境被害について、生徒は「工業の発展を数字で見るだけでなく、住民の暮らしの被害と政治の責任を調べたい」と考えた。
田中正造の行動と結び付けた説明として最も適切なのはどれか。
- 田中正造の活動を、江戸時代の国学の復興運動として位置付ける。
- 足尾銅山への取組を、住民の被害は経済成長によって検討不要になるという主張として捉える。
- 足尾銅山の鉱毒問題への取組に着目し、産業と人々の生活の関係を問い直す。
- 鉱毒問題を、環境と政治の関係を考えることのできない個人の嗜好の問題とする。
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正解:3.足尾銅山の鉱毒問題への取組に着目し、産業と人々の生活の関係を問い直す。
田中正造は足尾鉱毒事件への取組で知られる。産業発展と生活・生命の保全との緊張を考える題材となる。経済指標だけから被害の正当化を導くことはできない。
問23 · 第5問 倫理:自己理解と他者(3点)
進路を考える会話(創作)
A「周りの期待に応えたいけれど、自分が何を大切にしたいか分からない。」
B「すぐ一つに決めるより、経験や対話を通して、自分のあり方を考えてみよう。」
エリクソンの考え方に照らした説明として最も適切なのはどれか。
- アイデンティティは出生時に完全に決まり、社会経験によって変化しない。
- 青年期のアイデンティティ形成には、自分の連続性や社会の中でのあり方を探る課題がある。
- 青年期の課題は、他者との関係をすべて断って役割を一切持たないことである。
- 進路を迷うことがあるという事実だけで、人格全体に問題があると判定できる。
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正解:2.青年期のアイデンティティ形成には、自分の連続性や社会の中でのあり方を探る課題がある。
エリクソンは生涯発達の中に青年期の同一性形成を位置付けた。迷いや試行を直ちに病気や失敗とみなすのではなく、自己と社会的役割の関係を探る過程として考えられる。
問24 · 第5問 倫理:自己理解と他者(3点)
行為を説明する立場の比較(再構成)
Pは本人が意識していない欲求や葛藤も、行動を理解する手掛かりになると考える。Qは観察できる行動と、刺激や行動の結果との関係を研究の中心に据える。
P・Qの歴史的立場として最も適切なのはどれか。
- P:精神分析/Q:行動主義。
- P:行動主義/Q:精神分析。
- P:精神分析/Q:無意識だけを研究する立場。
- P:行動主義/Q:自由意志だけであらゆる行動を説明する立場。
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正解:1.P:精神分析/Q:行動主義。
精神分析は無意識や葛藤を重視する。行動主義は観察可能な行動と環境との関係を重視して展開した。歴史的な理論の特徴を学ぶことと、現代の全研究が各理論を全面支持することは別である。
問25 · 第5問 倫理:自己理解と他者(3点)
相談の場面(創作)
相談を受けた人は、相手をすぐに評価して正解を指示するのでなく、その経験や気持ちを理解しようとした。本人が自分の感じ方を言葉にする過程も支えた。
ロジャーズの考え方と関係が深いものを選べ。
- 本人が何を感じたかより、罰によって発言を減らすことだけを目的にする。
- 助言者が相手の価値を成績で決め、一定水準に達した場合だけ受容する。
- 相手の経験を聞かず、助言者の過去の成功例を唯一の正解として適用する。
- 共感的理解や無条件の肯定的関心を重視し、本人の成長の可能性を支える。
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正解:4.共感的理解や無条件の肯定的関心を重視し、本人の成長の可能性を支える。
ロジャーズの来談者中心の考え方は、共感的理解・無条件の肯定的関心などを重視する。本人のすべての行動を無批判に正しいとすることではなく、人としての受容と成長の支援に関わる。
問26 · 第5問 倫理:自己理解と他者(3点)
相手をどう捉えるか(創作)
A「相手を自分の目的に使える存在としてだけ見ていたのかもしれない。」
B「相手に向き合う関係では、分類や情報に還元し切れない出会いがあるのではないかな。」
ブーバーの思想に関する説明として最も適切なのはどれか。
- 〈我―それ〉は一切の日常的な知識を不可能とするため、現実には存在しない関係である。
- 〈我―汝〉とは、相手の反応を数値だけで予測し操作する関係を意味する。
- 相手を対象として扱う〈我―それ〉と、人格的に向き合う〈我―汝〉の関係を区別する。
- 他者との出会いは自己の独り言と同じなので、対話には独自の意味がないとする。
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正解:3.相手を対象として扱う〈我―それ〉と、人格的に向き合う〈我―汝〉の関係を区別する。
ブーバーは〈我―汝〉と〈我―それ〉を区別した。相手を役割やデータとしてのみ扱わず向き合う関係を考える手掛かりになる。対象化を伴うあらゆる知識を無意味とする説明ではない。
問27 · 第5問 倫理:自己理解と他者(4点)
学習方法の調査(架空)
希望者だけが参加する学習会の参加者と非参加者について、後の得点を比べた。開始前の学力や学習時間は調べていない。
調査の結論として最も適切なのはどれか。
- 平均点に差があるので、学習会に参加すれば全員の点数が必ず20点上がる。
- 参加者の平均点は高いが、参加前の差なども考えられ、学習会だけが原因とは断定できない。
- 両群が同人数なので、参加前の条件は必ず同じだったといえる。
- 非参加者にも高得点者がいる可能性があるため、平均値の比較自体に意味はない。
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正解:2.参加者の平均点は高いが、参加前の差なども考えられ、学習会だけが原因とは断定できない。
平均の差は80−60=20点である。しかし希望者の参加では元々の意欲や学力などが異なる可能性がある。相関や群間差と因果を区別し、事前得点や割当方法などを検討する必要がある。
問28 · 第6問 倫理:現代の課題を探究する(3点)
長期に残る影響(創作)
新技術の導入では、今いる人々への便益は見積もれる一方、長い将来や生態系への影響には不確実性が残る。将来の人々は、現在の会議で意見を述べることができない。
ヨナスの責任倫理と関係が深い検討はどれか。
- 技術による影響の広がりを踏まえ、未来の人々や生命の存続への責任も考える。
- 現在の当事者が合意すれば、将来世代への影響は倫理の対象外とする。
- 将来を完全に予測できない限り、技術の利用について議論する責任はないとする。
- 目先の便益が確認できれば、不可逆な影響の可能性を調べる必要はないとする。
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正解:1.技術による影響の広がりを踏まえ、未来の人々や生命の存続への責任も考える。
ヨナスは現代技術の力と長期的影響を踏まえ、未来の人間や生命への責任を論じた。不確実性を理由に検討を放棄するのでなく、その重大さを倫理的な問いとして扱う。
問29 · 第6問 倫理:現代の課題を探究する(3点)
医療の説明と選択(創作)
治療の提案を受けた人が、目的・期待できる効果・不利益・代替手段について説明を受け、質問する時間を持ったうえで選択した。
この過程の倫理的意義として最も適切なのはどれか。
- 本人が選択できる場合は、効果や不利益について情報を伝える必要をなくす。
- 説明者が望む選択を必ずさせることで、本人の自律を実現する。
- 同意書に署名したという形式だけで、理解や自発性の検討を不要にする。
- 理解に基づく自発的な選択を支え、本人の自律を尊重する。
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正解:4.理解に基づく自発的な選択を支え、本人の自律を尊重する。
インフォームド・コンセントでは説明と理解、自発性などが重要になる。署名の取得だけに還元されない。自律の尊重は、本人に必要な情報や対話の機会を与えることと関係する。
問30 · 第6問 倫理:現代の課題を探究する(3点)
苦痛への配慮(創作)
動物を扱う研究について、Aは「人間とは違う種だから利益を考える必要はない」と述べた。Bは「苦痛を感じる能力があるなら、その利益を考慮から外す理由を問い直したい」と応じた。
シンガーの議論と関連するBの立場として最も適切なのはどれか。
- 人間以外の生物に関しては、実際の苦痛を調べる必要がないとする。
- すべての生物が同一の能力を持つので、同じ政治的権利を一律に与えるとする。
- 種が異なることだけを理由に、苦痛などへの配慮を排除する態度を問い直す。
- 苦痛への配慮は人間への配慮を必ずすべて否定することだとする。
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正解:3.種が異なることだけを理由に、苦痛などへの配慮を排除する態度を問い直す。
シンガーは種差別を批判し、苦痛を感じる能力と利益への平等な配慮を論じた。異なる能力や利害を持つ存在への配慮を、すべて同一の扱いをすることと混同しない。
問31 · 第6問 倫理:現代の課題を探究する(3点)
AI導入をめぐる協議(創作)
学校が相談支援にAIを導入する案を議論した。推進側は費用削減を、慎重側は誤判定や個人情報への影響を挙げた。司会は、影響を受ける人が参加して根拠を問い直せる場を設けようと提案した。
ハーバーマスの討議に関わる考え方に最も近いものを選べ。
- 専門的な用語を多く使った人の結論を、反論の可能性を閉じて採用する。
- 権力や立場の強さだけで決めず、参加者が理由を示し相互に批判・検討できる条件を整える。
- 費用以外の価値が登場した場合には、公共的な議論を終了する。
- 合意の形成は議論の条件と無関係なので、発言機会の偏りを放置する。
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正解:2.権力や立場の強さだけで決めず、参加者が理由を示し相互に批判・検討できる条件を整える。
ハーバーマスはコミュニケーションや討議を通じた相互理解・正当化を重視した。結論に至る過程の条件や批判可能性も重要で、単に全員が同じ意見を述べることとは異なる。
問32 · 第6問 倫理:現代の課題を探究する(4点)
制度案の比較(架空の単純化モデル)
社会の三つの集団への便益を示した。ここでは数値が大きいほど便益が大きく、各集団の人数は同じと仮定する。ロールズの格差原理に着目し、最も不利な集団の便益を比べる。基本的自由と公正な機会均等の条件は各案で等しく満たすものとする。
この限定された比較からいえることとして最も適切なのはどれか。
- 最も不利な集団の便益は案Bが最大である。総和だけでなく最も不利な立場への影響を問う比較である。
- 便益の総和は案Aが最大なので、格差原理でも必ず案Aが選ばれる。
- 案Cは集団間の差がゼロなので、最も不利な集団の便益も必ず最大である。
- 案Bでは便益に差が残るので、ロールズの考え方を使った比較の対象にはできない。
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正解:1.最も不利な集団の便益は案Bが最大である。総和だけでなく最も不利な立場への影響を問う比較である。
各案の最小値はAが2、Bが5、Cが4で、この条件下ではBが最大となる。ロールズの格差原理は不平等を無条件に禁じるのではなく、最も不利な人々の利益に関わる条件を問う。自由や機会の条件を省いた単純な総和比較とは異なる。
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